大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和28(あ)5153 決定

主 文

本件各上告を棄却する。

理 由

被告人Aの上告趣意について。

所論の述べるところは、要するに事実誤認の主張を出でないものであつて、刑訴

四〇五条の上告理由に当らない。

右被告人弁護人久末直二の上告趣意について。

所論第一点及び第二点は、結局事実誤認と単なる法令違反(理由不備、審理不尽)

の主張、同第三点は量刑不当の主張に過ぎず、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に

当らない。そして右被告人本人の上告趣意とともに、その理由のないこと原判決が

委しく説明しているとおりであつて、所論はひつきよう第一審及びこれを支持する

原審が、証拠に基いて適法になした事実認定と異なる見解に立つて理論を展開する

に過ぎない。

被告人Bの弁護人加藤茂樹の上告趣意について。

所論は単なる量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そ

して原判決の説明するように、被告人に対する刑は相当であつて、さらに考慮すべ

き事由は認められない。

同被告人の弁護人大橋茹の上告趣意について。

所論は、原判決に判断遺脱があることを理由として刑訴法違反を主張し、併せて

憲法違反があるともいうが憲法の条項を挙げていない。よつて所論の判断遺脱を主

張する点について、原判決の理由と所論の控訴趣意書とを対照して検討してみると

同趣意書第一点の主張について原審の判断があることは認められるが、同第二点に

ついて判断を示した形跡がない。してみれば、この遺脱は所論指摘のとおり違法で

あるといわなければならない。よつてさらにこの違法が原判決を破棄すべき事由に

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当るかどうかについて考究してみるに、所論引用の当裁判所判例は、判断を遺脱し

た控訴趣意の内容が判断を示した他の控訴趣意に包含されている場合には、実質的

には判断を遺脱したことにならないという趣旨であるから、本件の場合に当らない

こと所論のとおりである。しかし控訴趣意の特定の主張について判断を遺脱したよ

うな場合でも、その主張が単に事実誤認又は理由不備に過ぎないものであつて、し

かも上告審において調査の結果、かかる違法が全く認められない場合には、刑訴四

一一条を適用しこれを破棄しないでも、著しく正義に反するものではないと解する

を相当とすること当裁判所の判例とするところであり、また判断を遺脱した控訴趣

意自体が本来理由がないときは、同じく刑訴四一一条一号の場合に当らないとする

ことも当裁判所の判例とするところである(昭和二六年(あ)第二八八三号昭和二

八年三月二〇日第二小法廷決定、昭和二六年(あ)第一三九四号同二七年一二月一

六日第三小法廷決定各参照)。そこで本件記録について、第一審判決に所論の控訴

趣意第二点に指摘するような違法があるかどうかを調べてみるに、本件放火当時被

告人等夫妻はその居宅に子供等とともに同居しており、現にその長女は消火に力を

尽していることが認められ)一八一丁、二五〇丁)、また工場の方にも被告人の弟

が起居していたことが認められ(二二四丁)、第一審判決の判示事実に「因つて現

にC等の住居する住宅及び工場、作小屋を焼燬させた上」とあるのは、まさに被告

人とその妻Cの他に人が住居として使用していることを示したものにほかならない。

そして所論は被告人の妻Cが共犯者であることをしきりに主張するが同人について

なんら公訴の提起がなく、原判決も所論のような認定をしていないのであるから、

原審の認定に副わないCが共犯であることを前提とし、第一審判決が刑法一〇八条

を適用したのは、大審院判例に違反し同条の解釈を誤つた違法があると主張するの

は、前提において当らず、引用の判例も適切でないことに帰する(また仮りにCが

共犯として起訴されそのように認定されたとしても、前記事実によればなお刑法一

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〇八条を適用すべき場合であること明らかである)。従つて第一審判決が、Cが共

謀者の一人である事実を看過した違法があるとする主張も理由がないことに帰する。

されば第一審判決において被告人の本件所為を刑法一〇八条所定の放火罪に問擬し

たことは相当であつて違法のかどはなく、控訴趣意第二点は結局理由がないことに

帰するのである。以上のとおりであるから、原判決には所論の指摘するような判断

違脱があり違法たるを免れないけれども、その控訴趣意の内容が以上説示のとおり

であるから、結局前記違法は判決に影響がないこととなり、本件を破棄しないでも

著しく正義に反するものではないといわなければならない。されば所論は結局にお

いて採用することはできない。

その他記録を調べても刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。

よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとお

り決定する。

昭和三〇年一一月八日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 小 林 俊 三

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 本 村 善 太 郎

裁判官 垂 水 克 己

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